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キャリア・スキル

20代・30代・40代で変わるのは、技術の量ではありません。増えているのは、あなたが引き受けている判断の量です

木目のデスクの上に、厚みの違う3冊のノートが少しずらして重ねて置かれ、その右に黒いボールペンと白いマグカップ、黒縁の眼鏡が並んでいる写真。背景の窓は柔らかくぼけている

結論

「SESは何歳まで働けるのか」。この問いは、たいてい年齢そのものの話として語られます。ただ、現場が年代ごとに見ているのは、もっと具体的な一点です。年代とともに増えているのは、あなたが引き受けている判断の量です。

手掛かりは統計にあります。情報サービス産業の給与を年齢別に集めた調査では、25歳の平均年収が3,969,373円、35歳が5,452,443円でした。差は約148万円です。この差が何に対して払われているのかを追うと、年代ごとに求められているものが見えてきます。

20代は、渡された作業を終わらせること。30代は、渡され方が粗くなっても前に進められること。40代は、止まったときに原因を切り分けられること。順に見ていきます。

根拠

順番はこうです。1と2で業界の統計を、3で年齢の扱いを定めた法令を確かめ、そのうえで4から6で年代ごとの要求と、7で会社側の事情を見ます。

1. 25歳と35歳で、年収の平均は約148万円違います

一般社団法人情報サービス産業協会が正会員471社に行った「2024年版 情報サービス産業 基本統計調査」に、300社が回答しています(有効回答率63.7%)。年齢別の給与は次のとおりです。

  • 25歳:月間給与247,814円/年間賞与995,603円/年収3,969,373円
  • 30歳:月間給与288,948円/年間賞与1,318,369円/年収4,785,751円
  • 35歳:月間給与327,413円/年間賞与1,523,491円/年収5,452,443円

25歳と35歳の差は1,483,070円です。ここでいう給与は基本給や役職手当などの所定内給与で、残業手当を含みません。各社の回答を単純平均した数字で、企業規模による重みづけもしていません。

読み方には注意が要ります。これは同じ人が10年かけて上がった昇給の記録ではありません。いま25歳の層と、いま35歳の層を並べた断面です。年齢が上がれば自動的に届く金額ではありません。

2. 従業員の平均年齢は41.3歳。35歳で人が消える業界ではありません

同じ調査で、回答企業の従業員の平均年齢は41.3歳でした(男性42.5歳、女性37.3歳)。ただし中身を見る必要があります。これは営業や管理部門を含む全従業員の数字で、SES事業者に限った統計でも、エンジニアだけの統計でもありません。

それでも「SESは35歳まで」という通説とは噛み合わない水準です。一方で、その通説が消えない理由も見当がつきます。在籍している人の年齢と、新しい案件に入れるかどうかが別の問題である以上、平均年齢の高さは、35歳を過ぎても同じように案件へ入れることまでは意味しないからです。扱いは場面で変わります。

3. 年齢の線は、採用の場面と案件の場面で扱いが違います

労働者の募集と採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを、労働施策総合推進法第9条は事業主に義務づけています。平成19年の改正で努力義務から義務に変わり、同年10月1日に施行されました。例外は施行規則に限定列挙されています。求人票から年齢の条件が消えているのは、この規定によるものです。

ただし、この条文が名宛人にしているのは、労働者を募集し採用する事業主です。客先が発注の条件として要員の年齢に触れる場面は、その客先による募集や採用ではありません。第9条が直接規律する場面ではない、という整理になります。なお契約が労働者派遣にあたる場合は、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めることが、労働者派遣法で定められています。線は場面ごとに引かれます。

案件条件に年齢の目安が残るのは、その年代に期待する役割を年齢で代用しているからだと筆者は考えています。役割の側を先に示せれば、目安の重みは下がります。

4. 20代に値段がついているのは、渡した作業が返ってくることです

20代が入る現場は、作業の粒度が細かい前提で段取りが組まれています。仕様が決まっていて、手順があり、確認する相手も決まっている。評価の軸は単純です。決められた範囲を、期日どおりに終えられるかどうか。それだけです。

技術の幅を先に広げるより、任せた作業が返ってくるという信頼が先に立ちます。地味な話です。ただ、次の年代の入り口はここにあります。

5. 30代で、渡され方が変わります

山はここです。年代の切れ目がいちばんはっきり出るのが30代で、渡される作業の粒度がここで粗くなります。「この画面を直してください」が「この機能の要件を詰めてください」に変わる。仕様の穴は自分で見つけ、埋め方を提案する側に回ります。

期日の意味も変わります。20代の期日は、渡された作業が終わる日でした。30代の期日は、他の人の作業が始められる日になります。自分の手が空いているかどうかより、誰の手を止めているかで動く順番が決まる。この切り替えが起きた人には、進め方を任せてもよいという判断がつきます。

面談で聞かれることも変わります。「何ができますか」から「どう決めましたか」へ。設計の選択肢が複数あったとき、何を基準にどれを選んだのか。この説明ができるかどうかで、経歴書の見た目が同じでも評価は分かれます。

25歳と35歳の年収の差は、この移行が起きた人を含む平均です。筆者は、差の大部分をこの移行が押し上げていると考えています。渡され方が20代のまま変わらなければ、増えるのは年齢だけです。

6. 40代は、止まっている原因を切り分ける役として呼ばれます

40代の要求は、対象が人と工程まで広がります。障害が出たときに、原因が設計にあるのか、運用手順にあるのか、体制の穴にあるのかを切り分ける。誰に何を確認すれば話が前に進むのかを知っている。この二つは年数がないと積み上がりません。近道もありません。

逆の面もあります。40代で「手が速い」だけを持ち味にすると、単価の説明は難しくなります。作業量で比べられる土俵に乗れば、体力のある若手と同じ物差しで測られるためです。

7. 年代が上がっても給与が動かないなら、原因は社内にあります

ここまでは客先から見た要求の話です。任される範囲が広がって単価が上がったのに給与が変わらないなら、止まっているのは会社の中です。単価が本人に開示されるか。上がった分を給与に反映する定めが社内にあるか。その定めを動かす機会が年に何回あるか。いくら反映するかを何を見て決めるか。経路は4つに分かれます。

どこで止まっているかで、打つ手は変わります。開示で止まっているなら聞けば動きます。連動の定めがないなら、いくら聞いても動きません。切り分けの手順は単価と給与をつなぐ4つの関門にまとめています。

行動提案

年代の話は抽象論になりがちです。手を動かせる形にします。

直近3ヶ月で自分が下した判断を、3つ書き出す

「何をやったか」ではなく「何を決めたか」で書きます。選択肢が複数あった場面、選んだ理由、その結果。揃って1件です。

3つ埋まらないなら、いまの現場で任されている粒度が20代の水準に留まっているというサインです。経歴書の書き換えより先に、現場での立ち位置を動かす話になります。次の定例で、決まっていない事項をひとつ引き取るところから始められます。逆に3つ以上あるなら、その記録がそのまま面談で使えます。

面談では、任される粒度を先に聞く

「どんな技術を使いますか」に加えて、次の3つを聞きます。設計はどこまで自分で決められるのか。仕様の確認は誰に直接できるのか。レビューは誰が行うのか。答えが「決まったものを実装してもらう」で揃うなら、その現場は年数を重ねても渡され方が変わりません。

会社側の経路を、入社前に数字で確認する

役割が変わっても、それが給与に届く経路が会社になければ結果は同じです。単価は開示されるのか。単価が上がったとき、給与に反映する定めはあるのか。見直しは年に何回あるのか。どれも入社前に聞いて差し支えのない質問で、答え方そのものが会社の姿勢を映します。

年代が上がって増えるのは、年齢と、引き受けた判断の量です。給与に届くのは後者だけです。

次の現場で何を任されるのか。その役割にいくらの単価がついているのか。両方を先に見て決められます。

アンサーライズは受注単価を100%開示し、参画する案件はエンジニア本人が選びます。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給し、この割合に社会保険料の会社負担分は含みません(会社が別途負担します)。昇給は案件単価の変動に連動し、年1回見直します。材料は先に渡します。年代とともに役割が変わったとき、それが金額に届くかどうかを、入社前に数字で確かめてください。

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