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単価・お金

単価が上がっても、給料が上がらない。止まっているのは評価ではなく、単価と給与をつなぐ4つの関門のどれかです

白い板張りのデスクの上に、開いた無地のリングノートと黒いボールペン、白いマグカップ、閉じたノートパソコンが置かれ、窓からの光が斜めに差し込んでいる写真

結論

単価が上がったと聞いたのに、給与明細は先月と同じ。このとき真っ先に浮かぶのは「自分の評価が低いのだろうか」という疑いだと思います。ただ、そこから考え始めると打つ手がありません。評価は、単価が給与に届くまでの最後の一区間にすぎないからです。

経路は4つに分かれます。単価が上がった事実が本人に伝わるか。上がった分を給与に反映する定めが社内にあるか。その定めを動かす機会が年に何回あるか。そして、いくら反映するかを何を見て決めるか。

どこで止まっているかで、やるべきことは変わります。開示で止まっているなら、聞けば動きます。連動の定めがないなら、いくら聞いても動きません。特定が先です。

根拠

世の中の賃金がどう動いているか、昇給のルールがどこに書かれているか、単価と給与の配線が会社ごとにどう違うか。この順で見ていきます。

1. 賃金が動いていないのは、業界の側の事情ではありません

まず前提を確認します。厚生労働省の「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」(常用労働者100人以上の民営企業が対象、有効回答1,847社)では、1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業は91.5%でした。改定額は13,601円、改定率は4.4%です。

  • 情報通信業でも動いています:産業別に見ると、情報通信業の改定額は14,096円、改定率は3.9%でした。
  • 実施しない企業は少数です:賃金の改定を実施しないと回答した企業は2.4%でした。

「この業界だから上がらない」という説明は、この数字とかみ合いません。理由は社内にあります。

2. 昇給のルールは、必ず文書になっています

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけています。その第2号は「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」です。昇給は、定めを置いた場合にだけ書けばよい項目ではありません。必ず書かなければならない側の項目です。

同法第106条は、就業規則を作業場の見やすい場所へ掲示する、備え付ける、書面を交付するなどの方法で労働者に周知させることも使用者に義務づけています。つまり、読める状態に置かれているはずのものです。「うちは評価で決まる」と言われたら、その評価が規程のどの条文に対応しているのかを見に行けます。

3. ただし、入社時に書面で渡されるとは限りません

ここに落とし穴があります。労働条件の明示について、労働基準法施行規則第5条第3項は書面で明示すべき事項を定めていますが、その条文には「昇給に関する事項を除く」と書かれています。昇給は、明示は必要でも書面交付は必須ではないという扱いです。

  • 「昇給あり」で終わっていることがあります:面接や内定時の説明が口頭だけだと、時期も条件も幅も手元に残りません。
  • それでも文書はあります:明示が口頭で足りることと、第89条の記載義務は別の話です。規程は必ずどこかにあります。
  • だから、聞くのは特別な要求ではありません:周知義務がある以上、どこで読めるかを確認するのは自然な行為です。

4. 単価と給与をつなぐ配線は、会社ごとに違います

同じ「SES」でも、単価の上昇が給与に届く経路の作りが違います。ここが本題です。

  • 単価連動型:受注単価に一定の割合を掛けて給与を決める作りです。業界メディアでは、クライアントからの単価を基準に月給・賞与・昇給額が決まる仕組みとして説明され、単価と還元率を開示することで報酬額の根拠が分かる点が利点に挙げられています。単価が動けば、給与も動きます。ただし還元率は定義が各社で違うため、数字だけでは比べられません。この点は還元率の記事で扱っています。
  • 固定給+等級型:等級と評価で給与を決め、単価は会社の収支側で吸収する作りです。この型では、単価が上がったこと自体は給与を動かす要因になりません。動かすのは等級の変更だけです。
  • 分かれ目は1つ:単価の変動が、給与計算の入力に入っているかどうか。入っていない会社では、単価交渉が成功しても給与は変わりません。

どちらの型が優れているという話ではありません。固定給型は、単価が下がったときの防波堤にもなります。問題は、自分の会社がどちらの型なのかを知らないまま働いていることです。確認は一度で済みます。そもそも単価がどこで決まるのかは商流の記事にまとめています。

5. 改定の判断で最も見られているのは、あなたの案件単価ではありません

先ほどの調査には、賃金の改定にあたり最も重視した事項の集計もあります。

  • 「企業の業績」が41.7%:最も多い回答でした。次いで「労働力の確保・定着」17.0%、「雇用の維持」11.9%と続きます。
  • 「重視した要素はない」が5.2%:判断の軸そのものを持たない企業も一定数あります。

読み替えると、多くの会社で賃金を動かす引き金は個別案件の単価ではなく全社の業績だということです。自分の単価が上がっても、全社の業績が振るわなければ原資は回ってきません。裏を返せば、単価が据え置きでも全社が好調なら上がります。単価と給与の連動を制度として持っていない会社では、この関係がそのまま残ります。

行動提案

特定は4つの質問で足ります。答えが具体的な数字や月で返ってきた関門は、そこは通っています。

1. 4つの質問で、止まっている関門を特定する

  • いま自分の単価はいくらですか:答えられないなら、第1関門(開示)で止まっています。
  • 単価が上がったとき、給与はどう変わりますか:「評価による」しか返らないなら、第2関門(連動の定め)が怪しいところです。
  • 給与を見直す機会は年に何回、いつですか:回数と月が出てこないなら、第3関門(改定の機会)です。
  • その見直しで、金額は何を見て決まりますか:ここで初めて、評価の話になります。

2. 就業規則と賃金規程の、昇給の条項を読む

口頭の説明と文書が食い違うことがあります。読むのは3か所です。

  • 昇給の時期:年1回か、随時か。時期の定めそのものがあるか。
  • 昇給の条件:勤続、等級、評価、単価のどれが書かれているか。単価という語が一度も出てこない規程は、単価連動型ではありません。
  • 評価の反映方法:評価の結果が金額にどう変換されるのかが、書かれているかどうか。

3. 単価・評価・改定額を、同じ表に1年分並べる

記憶で話すと「上がっていない気がする」で終わります。表にすれば、止まっている行が見つかります。

  • 列は3つで足ります:更新月ごとの受注単価、その期の評価結果、実際の給与改定額。
  • 単価が動いて給与が動かない行:連動の定めがないか、原資が別の判断で止められています。
  • 評価が上がって給与が動かない行:評価と金額の変換が定義されていない可能性があります。
  • どちらも動いていない行:そもそも改定の機会が来ていません。第3関門です。

4. 制度・運用・環境のどれなのかを切り分ける

最後に判定します。ここを飛ばすと、会社を変えたところで、また同じ関門の前で止まることになります。

  • 制度の問題:規程に単価連動の定めがなく、改定の機会も乏しい。個人の努力では動きません。
  • 運用の問題:定めはあるのに、評価面談が実施されない、結果が伝えられない。求めれば動くことがあります。
  • 環境の問題:単価も、判断の主体も、次の条件も示されない。単価交渉の記事で書いた切り分けと同じです。

制度の問題だと分かったなら、次に見直すのは自分の頑張り方ではありません。会社の設計のほうです。

単価と給与のつながり方を、入社前に条文と数字で確認できます。

アンサーライズの昇給は、案件単価の変動に連動し、年1回の見直しを行います。受注単価は100%開示します。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給し、この割合に社会保険料の会社負担分は含みません(会社が別途負担します)。単価がいくらで、そのうち何%が給与になるのか。計算の材料を、先にお渡しします。

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