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キャリア・スキル

「経歴書に書くことがない」のは、仕事が薄いからではありません。書いているのが、全員に当てはまる16行だからです

木目のデスクに開いたノートが置かれ、その上に銀色のボールペンが斜めに載っている写真。左奥に画面が暗いノートパソコン、右手前にベージュのマグカップ。背景には書類の並んだ木の棚と観葉植物がぼけて写り、左の窓から差す光が机の表面に広がっている

結論

「経歴書に書くことがない」。運用や監視の現場が長い人ほど、この相談が出ます。ただ、1日8時間、手は動いているはずです。残っていないのは、その手が何を決めたかの記録のほうです。書くことがないのではなく、書ける形で残していないだけです。

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト job tag は、「運用・管理(IT)」という職業のタスクを16項目で定義しています。リソース監視、バックアップ、障害の復旧、問合せ対応、手順書の更新。昨日あなたが触った仕事も、たいていこのどれかに入ります。例外は少ないはずです。

問題はその先です。16項目には実施率が併記されていて、最も低いもので72.6%、最も高いもので90.3%。同じ職業の人のほとんどが、同じ16行をやっています。写して並べた経歴書は、読む側から見れば全員同じ紙になります。差は出ません。翻訳とは、その16行に判断と範囲と数を足す手つきを指します。

根拠

公的な職業定義と評価様式を並べると、経歴書が薄くなる理由が見えてきます。

1. 国の定義では16行。しかも、ほぼ全員が同じ16行をやっています

job tag の「運用・管理(IT)」には、職業別名が7つあります。サーバー管理者、システム管理者、運用監視オペレーター、システム運用オペレーター、システム運用管理者、システム保守員、ネットワーク管理者。仕事の説明は一文です。「サーバー等情報システムがトラブルや不具合で停止することなく安定して稼働するよう運用・管理する。」

「タスク(職業に含まれるこまかな仕事)」として挙がっているのは、次の16項目です。括弧内は原典に併記されている実施率で、この職業で働く人のうち実際にそのタスクを実施している割合を表します。この割合が効きます。

  • サーバーのリソース監視を行う。(72.6%)
  • トラブル・不具合、外部からの攻撃、異常なアクセスなどがないか情報システムを監視をする。(80.6%)
  • 定期的にデータやシステムのバックアップを行う。(90.3%)
  • 故障や異常など障害が起こったときに、保守担当に連絡する。(82.3%)
  • 故障や異常など障害が起こったときに、早期に復旧するよう作業を行う。(85.5%)
  • ユーザーやヘルプデスクからの問合せに対応する。(79.0%)
  • 週次、月次など定例ミーティングで運用方法の検討や見直し、情報共有をする。(80.6%)
  • 運用手順書などのドキュメントを更新する。(83.9%)
  • 日報を作成し、翌日の業務の準備をする。(77.4%)
  • クライアントの情報システムをリモートで運用・管理する。(74.2%)
  • リモートで対応できない場合、クライアントのところに行き、復旧作業等を行う。(77.4%)
  • データベースから必要なデータを抽出する。(75.8%)
  • ユーザー権限を管理する。(82.3%)
  • IT内部統制の管理業務を行う。(79.0%)
  • 情報システムのサービスを切り替えたり、新サービスを公開する。(77.4%)
  • ネットワークやサーバーを新たに構築・導入する。(79.0%)

数字のほうを見てください。最も低いサーバーのリソース監視で72.6%、最も高いバックアップで90.3%。どの行も7割を下回りません。ほぼ全員です。この16行が表しているのは、あなたが何をやってきたかではありません。この職業の人が何をやっているか、です。

2. 同じ1行の裏に、まったく違う2人が立っています

「サーバーのリソース監視を行う。」経歴書にこう書いたとき、読む側には何も見えていません。しきい値を自分で決めた人と、鳴ったアラートを手順書どおり転送していた人が、同じ1行に収まるからです。行の字面では見分けがつきません。

実施率の高さは、このことを裏から支えています。ほぼ全員が「やっている」と答えられる粒度で書かれているから、どの行も7割を超えるのであって、裏返せばこの16行は個人を識別するようには作られていません。粒度が粗いということです。粗いままの行をいくつ並べても、その人が見えてくることはありません。

作業の名前と、そこでの到達度。この2つを分けておく工夫は、公的な辞書のほうが先に手を打っています。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は2022年12月に iCD2022(i コンピテンシ ディクショナリ)を公開しました。そこでは「タスクディクショナリ」が「タスク3階層と評価項目の計4階層」で構成されています。作業の名前を3階層に分けたうえで、評価項目という層をもう1つ足してあります。層は全部で4つです。なお、この事業はIPAでは2022年度に終了しています。

筆者は、この4層目に「タスク名だけでは人を測れない」という前提が表れていると読んでいます。経歴書で起きているのは、その4層目を空欄にしたまま提出している状態です。そこを埋められるのは、現場にいた本人だけです。

3. 国の評価基準ですら、知識と行動を別の欄に分けています

できることと、実際にやったこと。国が能力を記述するときも、この2つは別の欄です。厚生労働省の職業能力評価基準は、その定義をこう書いています。「仕事をこなすために必要な『知識』と『技術・技能』に加えて、『成果につながる職務行動例(職務遂行能力)』を、業種別、職種・職務別に整理したもの」。策定が始まったのは平成14年度。いまは56業種をカバーしています。知識と技術・技能に「加えて」、行動例が立ててある。経歴書に製品名とバージョンだけを並べた状態は、前半だけを提出していることになります。

4. 去年の秋の障害、どこまで自分が持っていましたか

即答できる人は多くありません。足りないのは素材です。言い回しを工夫しても埋まりません。だから、手順の最後を記録の話にしています。

行動提案

手順は3つに分かれます。

16行を書き写して、直近1か月で触った行に印を付ける

まず、さきほどの16項目をそのまま書き写します。そのうえで、直近1か月で自分が実際に触った行に印を付けてください。思い出せる範囲でかまいません。ここでの目的は書く対象を16行に絞ることで、白紙に向かって「何かなかったか」と考えては行き詰まる時間が、この一手間でまるごと消えます。

ここが本体:印の付いた行に、判断・範囲・数を足す

作業名に足すものは3つだけ決まっています。その作業で何を決めたか(判断)、どこからどこまでを自分が持っていたか(範囲)、どれだけの量を扱ったか(数)。

以下は書き方の見本で、実在の案件・実績ではありません。「サーバーのリソース監視を行う。」という1行は、こう書き換わります。

小売の基幹系(サーバ40台前後)の監視を平日日中で担当した。ディスク使用率のしきい値が全台一律だったため誤検知が多く、アプリケーション別に3段階へ分ける案を作った。一次通知は月120件前後から40件台まで減った。変更の可否は運用リーダーが判断し、自分はしきい値案と影響範囲の資料を作成した。

見本は以上です。

ここまで書いて、ようやく読む側が評価できる材料になります。最後の一文を省かないでください。「決めたのはリーダー、自分は材料を作った」と正直に書くほうが、経歴書としては強く働きます。筆者の経験では、範囲を盛らずに書いてある文章なら、他の行の記述も信用されるからです。判断の主体をぼかした書き方は、面談で1問掘られた時点で崩れます。

数が手元にないときは、無理に作る必要はありません。「月120件」を思い出せないなら、件数は落として、範囲と判断だけで足ります。そこは減点になりません。

週に1回、10分だけ記録する

ここから先は、次の1年の話です。金曜の終業前に10分取って、その週に決めたことだけを3行書く。手順書のどこを直したか、どの問合せで判断が分かれたか、何を提案して通らなかったか。通らなかった提案も残します。検討したという事実は次の現場で経験として読まれる、と筆者は考えています。

作業名は毎日同じでも、その下で決めたことは毎日違う。違っている部分だけが、あなたの1年ぶんの差になります。書き留める場所さえあれば、来年は白紙から思い出す作業をしなくて済みます。かかるのは週に10分です。

「その作業を、誰がどこまで決めていましたか」。この問いに答えられる記録が残る現場か。入る前に確かめられます。

アンサーライズは受注単価を100%開示し、参画する案件はエンジニア本人が選びます。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません。会社が別途負担します。単価と案件の中身が最初から見えていれば、次の1年で経歴書のどの行を厚くするかは自分で決められます。まずは数字を見にきてください。

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