2次請けと3次請けで、同じ仕事の単価は変わります。変えているのは、あなたの技術ではありません
結論
同じ現場で、同じ作業をしていても、2次請けと3次請けでは、あなたの会社に届く金額が違います。差を作っているのは技術力ではありません。エンドユーザーからあなたまでの間に、契約が何本連なっているかです。
業界メディアで示されている相場では、商流が1段深くなるごとに概ね10〜20%の中間マージンが差し引かれるとされています。仮に1社あたり15%として、一次請けが100万円で受けた案件は、二次請けで85万円、三次請けで約72万円、四次請けで約61万円まで下がる——という試算が示されています。作業の中身は1ミリも変わっていません。
だから単価交渉の前に、確認すべきことが1つあります。「自分は何次請けか」。同じ努力をしても、立っている階層が違えば戻ってくる金額が違うからです。
根拠
なぜIT業界だけ階層が深くなるのか、1階層でいくら引かれるのか、そしてなぜそれが見えないのかを順に分解します。
1. IT業界には、建設業でいう「一括下請負の禁止」にあたる規定がない
同じく多重下請けを抱える建設業と比べると、制度の差がはっきりします。
- 建設業には明文の禁止規定がある:建設業法第22条は、請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず一括して他人に請け負わせることを禁じ、他の建設業者から一括して請け負うことも禁じています。
- 例外は限定的:同条第3項により、共同住宅の新築工事以外で、発注者から書面による承諾を得たときは適用が除外されます。ただし公共工事についてはこの例外がなく、全面的に禁止されています。
- 趣旨は責任の所在にある:元請負人が施工計画・工程管理・品質管理・安全管理・下請業者への指導監督といった事項に主体的に関わることを求める、という原則に基づく規定です。
- 情報サービス業には、これに相当する一般的な禁止規定がない:再委託を制限するかどうかは、個々の契約の条項に委ねられています。だから階層の深さは法律ではなく商習慣で決まります。
2. 1階層あたり、いくら引かれるのか
ここは公的な統計が存在しない領域なので、業界メディアが示す相場として読んでください。
- 相場は1階層10〜20%:業界メディアで示されている相場では、商流が1段深くなるごとに概ね10〜20%の中間マージンが差し引かれるとされています。
- 15%で試算した例:同じ資料では、一次請け100万円 → 二次請け85万円 → 三次請け約72万円 → 四次請け約61万円という試算が示されています。3社を経由すると、最初の4割近くが途中で消えている計算になります。
- 引かれる分がすべて不当な中抜きではない:各社に営業・契約管理・請求と支払サイトの立替・要員管理のコストが発生します。問題は悪意の有無ではなく、同じ1人分の作業に対して、そのコストが階層の数だけ積み上がるという構造の側にあります。
- 会社間の単価と、あなたの給与は別の数字:ここまではすべて会社と会社の間の金額です。額面給与は、自社に入った金額に自社の還元率を掛けたものになります。見るべき数字は2つある、ということです。
3. 派遣にはマージン率の公開義務がある。準委任・請負にはない
「では自分の商流を調べればいい」と考えたとき、最初にぶつかるのが情報の非対称です。
- 派遣元には情報提供義務がある:労働者派遣法第23条第5項に基づき、派遣元事業主は①派遣労働者数②派遣先件数③派遣料金の平均額④派遣労働者の賃金の平均額⑤マージン率⑥労使協定の締結状況⑦キャリア形成支援制度に関する事項⑧その他の情報を提供することとされています。
- 2021年4月から常時インターネット公開が原則:厚生労働省の周知資料は、令和3年4月1日より、情報提供の法的義務がある全ての情報について、原則として常時インターネットの利用により広く関係者に提供することとされている、としています。同省が運営する人材サービス総合サイトへの掲載が推奨されています。
- SESに多い準委任・請負には、この義務がない:商流や取り分が見えないのは、あなたの調べ方が悪いからではありません。制度上そうなっているからです。
- だから開示は「姿勢」の問題になる:義務のない領域で数字を開けるかどうかは、その会社が何を優先しているかの表明になります。
4. 2026年1月から、下請法は「取適法」になった
階層のどこかで値段が一方的に決められている場合、会社の側には使える制度があります。
- 法律の名称が変わった:公正取引委員会の資料によれば、下請法の改正法が2026年1月1日に施行され、名称が中小受託取引適正化法(取適法)になりました。「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」という呼び方に変わっています。
- 対象が広がった:資本金基準に加えて従業員基準(300人・100人)が加わり、特定運送委託が対象取引に追加されました。ソフトウェア開発などの情報成果物作成委託は対象に含まれます。
- 禁止行為が追加された:協議に応じない一方的な代金決定の禁止と、手形払いおよび支払期日までに満額を得ることが困難な支払手段の禁止が加わりました。
- 守られるのは会社であって、個人ではない:この法律が保護するのは受託した事業者です。エンジニア個人が直接使える制度ではありません。ただし「うちが買いたたかれているのではないか」と自社に伝えるときの材料にはなります。
行動提案
階層は自分では変えられません。変えられるのは、自分がどこに立っているかを知ることと、次にどこへ立つかを選ぶことです。
1. 自分が何次請けかを、会社名で特定する
「たぶん2次請けだと思う」では交渉の材料になりません。契約の当事者名で確定させます。
- 聞くのは3つ:自社が契約している相手の会社名/その会社はエンドユーザーか、さらに上に発注元がいるか/エンドユーザーまで何社が入っているか。
- 就業場所の会社名がエンドとは限らない:常駐先の看板と、発注の起点は別のことがあります。「どこで働いているか」ではなく「誰が誰に発注しているか」で数えてください。
- 答え方そのものが情報になる:即答できるか、確認して折り返すか、答えられない理由を説明するか。開示の姿勢はここに出ます。
2. 提示された単価が「どこの単価か」を必ず確認する
単価という言葉は、商流のどの段の金額を指しているかで意味が変わります。
- 2つの数字を分けて聞く:エンドユーザーが支払っている金額なのか、自社が受け取っている金額なのか。給与に直結するのは後者です。
- 還元率は定義をそろえる:同じ「◯%」でも、社会保険料の会社負担分を含む計算か、含まない額面給与ベースかで手にする金額は変わります。比較の前に定義を聞いてください。
- 掛け算で確かめる:自社への発注額 × 還元率 が、提示されている額面と合うか。合わないなら、どこかに説明されていない差があります。
3. 指示の経路が階層をまたいでいないか見る
階層が深い現場では、金額だけでなく指揮命令の線も曖昧になりがちです。
- 二重派遣は職業安定法の問題になり得る:派遣で受け入れた労働者をさらに別の会社へ供給する形は、職業安定法第44条が禁じる労働者供給に当たるとされ、同法の罰則として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が定められています。
- 準委任なのに客先が直接指示している場合:契約書の題名にかかわらず、実態が問題になります。線引きの詳細は準委任・派遣・請負の違いの記事にまとめています。
- 記録して、まず自社に渡す:日付/指示した人の所属(自社か客先か)/指示の内容。この3つで足ります。あてはまるかどうかの判断は自分でせず、都道府県労働局の需給調整事業部門などに相談してください。
自分が何次請けの現場に入るのかを、参画を決める前に確認できます。
アンサーライズは受注単価を100%開示しています。どこから、いくらで受注した案件なのかをお伝えしたうえで、案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません(会社が別途負担します)。参画する案件はご本人に選んでいただくため、商流の深さも含めて納得したうえで決めていただけます。
RELATED

