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単価・お金

単価交渉は、更新月の3ヶ月前に始まっています。決めているのは話し方ではなく、動き出す月です

明るい木目のデスクの上に、日付の入っていない卓上カレンダーと銀色のペン、白いマグカップが置かれ、窓からの自然光が斜めに差し込んでいる写真

結論

単価交渉が通らなかったとき、原因を「言い方が悪かった」に置きにいくと、次も同じ結果になります。多くの場合、内容ではなく切り出した月が遅いだけだからです。

業界メディアで示されている相場では、SES契約は3〜6ヶ月単位で更新されることが多く、単価交渉は契約終了の1〜2ヶ月前が目安とされています。ところが同じ資料は、多くの企業が次年度や次四半期の予算を2〜3ヶ月前から策定するため、予算が確定したあとに単価アップを依頼しても対応できない可能性が高い、とも指摘しています。目安とされる時期には、決める側の金額はもう固まりはじめているということです。

だから逆算します。1ヶ月前に更新条件が確定するなら、2ヶ月前には自社の営業に話が渡っていなければならず、その材料を作るのに1ヶ月かかる。動き出すのは更新月の3ヶ月前です。そして切り出す相手は、客先ではありません。

根拠

誰が金額を決めているのか、その人の予定がいつ埋まるのか、会社の側にどんな後ろ盾があるのか。この3つを順に見ていきます。

1. 金額を決める権限は、あなたの契約の外側にある

準委任でも派遣でも、金額を取り決めているのは会社と会社です。エンジニア本人はその契約の当事者ではありません。

  • 交渉の窓口は自社の営業になる:業界メディアでも、エンジニア個人がクライアントと直接単価を決めるケースは少なく、所属企業の営業担当を通じて交渉が行われるのが一般的だとされています。
  • 客先に直接金額の話をしない:金額は会社間の取り決めなので、常駐先の担当者に持ちかけても決裁できません。加えて、指揮命令や交渉の線引きが曖昧な現場だと、契約の実態そのものを疑われる材料になります。線引きの詳細は準委任・派遣・請負の違いの記事にまとめています。
  • だから往復の時間がかかる:自社 → 上位会社 → 客先と、承認が階層の数だけ積み上がります。商流が深いほど、返事が戻るまでの日数は伸びます。2次請けと3次請けの記事で扱った構造が、そのまま交渉のリードタイムになります。
  • 「言えば通る」ではなく「間に合えば検討される」:交渉の成否より先に、締切に間に合っているかどうかが効いています。

2. 予算は、更新月より前に固まっている

相手の締切から逆算すると、動くべき月が決まります。

  • 更新サイクルは3〜6ヶ月が多い:業界メディアで示されている相場では、SES契約は3〜6ヶ月単位で更新されることが多いとされています。
  • 交渉の目安は1〜2ヶ月前:同様に、契約終了の2ヶ月前を目安に営業担当へ単価アップの意向を伝えておくとよい、とされています。
  • 予算策定は2〜3ヶ月前から始まる:多くの企業では次年度や次四半期の予算を2〜3ヶ月前から策定するため、予算が確定したあとの依頼は対応できない可能性が高い、と指摘されています。目安の1〜2ヶ月前は、すでに策定期間の後半にあたります。
  • 派遣契約なら年度が起点になる:労使協定方式では、厚生労働省が毎年度「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」を職業安定局長通達で示しています。令和8年度に適用される分は2025年9月に公表されました。年度単位で更新される仕組みなので、4月が改定の起点になります。

3. 9月と3月は、会社が上流に交渉しやすい月として制度化されている

これは個人の給与交渉の制度ではありませんが、自社が動きやすい時期を知っておく価値はあります。

  • 年2回の「価格交渉促進月間」がある:中小企業庁は、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、毎年9月と3月を価格交渉促進月間と設定しています。
  • あとから調査が入る:月間の後には受注者へのフォローアップ調査が行われます。アンケート調査と下請Gメンによるヒアリング調査で、発注者による対応や回答が対象です。回答が発注者に知られないよう、匿名性の確保を徹底するとされています。
  • 結果は公表され、指導につながる:価格転嫁率や業界ごとの結果、順位付け等がとりまとめられ、状況の芳しくない発注者に対しては事業所管大臣名での指導・助言を実施するとされています。
  • 自社にとっては切り出す口実になる:上位会社に単価改定を持ちかけるとき、この月間は自然な入り口になります。自分の更新月がこの前後なら、そこに乗せてもらえないかを営業に聞く価値があります。

4. 2026年1月から、協議に応じない一方的な代金決定は禁止されている

会社の側には、交渉のテーブルに着かせるための制度があります。

  • 下請法が取適法になった:2026年1月1日から、下請法が中小受託取引適正化法(取適法)として施行されています。
  • 協議拒否そのものが禁止行為になった:中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に価格を決定する行為が禁止されました。
  • ソフトウェア開発は対象に含まれる:対象取引には情報成果物作成委託が含まれます。また資本金基準に加えて従業員基準が追加され、製造委託等は常時使用する従業員300人超、役務提供委託等は100人超が委託事業者側の基準になっています。
  • 守られるのは会社であって、個人ではない:この法律が保護するのは受託した事業者です。エンジニア個人が直接使える制度ではありません。ただし、自社が「協議に応じてもらえない」と言えるようになったことは、交渉の前提を変えています。

行動提案

3ヶ月前・2ヶ月前・1ヶ月前で、やることが違います。順番を守るだけで、通る確率は変わります。

1. 3ヶ月前:単価の話ではなく、実績の棚卸しから始める

この時点では、まだ誰にも交渉を持ちかけません。渡す材料を作る月です。

  • 書き出すのは3つ:担当した機能やタスクの一覧/障害対応・改善など、想定外に引き受けた仕事/新しく任された役割やレビュー・後輩指導などの範囲。
  • 「頑張った」ではなく「差分」で書く:参画時に想定されていた範囲と、いま実際にやっていることの差を書きます。営業が客先に持っていけるのは、この差分だけです。
  • いまの数字を確認しておく:自社がいくらで受注しているのか、還元率はいくつか。この2つが分からないと、いくら上げてほしいのかを自分で決められません。単価がどこで決まっているかは商流の記事にまとめています。
  • 金額は幅で決めておく:希望額と、これなら更新するという下限。数字を持たずに切り出すと、相手の提示額がそのまま結論になります。

2. 2ヶ月前:自社の営業に、金額ではなく「更新の相談」として渡す

いきなり「上げてください」と言うより、判断材料と締切を確認するほうが先に進みます。

  • 順番は、更新月の確認 → 実績の共有 → 打診の依頼:次の更新がいつか、いまこういう範囲を担っている、単価改定が可能か上に確認してほしい。この3段で足ります。
  • あわせて聞くのは3つ:現在の受注単価はいくらか/改定を判断するのは自社か上位会社か客先か/いつまでに言えば次の更新に間に合うか。
  • 締切を必ず数字で聞く:「そのうち聞いてみます」で終わらせず、いつまでに回答が必要かを日付で確認します。3ヶ月前から動いた意味は、この一言に集約されます。
  • 答え方そのものが情報になる:受注単価を即答できるか、確認して折り返すか、答えられない理由を説明するか。開示の姿勢はここに出ます。

3. 1ヶ月前:結果ではなく「理由」を受け取り、次の条件に変える

通らなかったときにここで終わらせると、次の更新でも同じ場所に立つことになります。

  • 聞くのは3つ:金額が動かない理由は商流のどこにあるのか/何がそろえば次は動くのか/次に判断されるのはいつか。
  • 返ってきた条件を文字にして残す:「この工程を任されたら」「この資格を取ったら」。口頭のままだと、次の更新で最初から説明し直すことになります。
  • 理由が出てこない場合は、交渉ではなく環境の問題:受注単価も、判断の主体も、次の条件も示されないなら、材料をそろえても結果は変わりません。切り分けて考えてください。
  • 次の3ヶ月前は、もう決まっている:更新月が分かった時点で、次に動き出す月も決まります。交渉は年に一度の出来事ではなく、更新サイクルに紐づいた作業です。

次の更新でいくらになるのかを、交渉を始める前に数字で確認できます。

アンサーライズは受注単価を100%開示しています。いま自社がいくらで受注しているのかをお伝えしたうえで、案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません(会社が別途負担します)。給与は案件単価に連動し、年1回の見直しを行います。交渉の材料を、こちらから先にお渡しするという考え方です。

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