参画初月にできあがるのは、仕事の慣れではありません。できあがるのは、指示があなたに届くまでの経路です
結論
参画初日、最初の作業依頼が届きます。誰から届いたかを思い出してください。現場のリーダーから直接でしたか。それとも自社の担当を一度通ってからでしたか。この一通が通った道は、たいてい2週目も3ヶ月目もそのまま使われます。初月に固まるのは、その道です。
準委任契約で常駐している間、業務の進め方をあなたに指示できるのは自社です。契約書の題名が何であれ、毎朝その日の作業を発注者から直接割り振られていれば、実態は労働者派遣に寄ります。厚生労働省は37号告示の疑義応答集で、この線引きを具体例のまま示しています。
初月にはもう一つ、別の時計が動いています。契約が3ヶ月単位なら、更新するかどうかの話は2ヶ月目に始まります。慣れてから本気を出す、という順番では間に合いません。
根拠
法令の運用指針と、契約期間の相場。この2つを並べると、初月に何が起きているかが見えます。
1. CCで送られること自体は、問題になっていません
発注者から届いた依頼メールが、管理責任者の了解のもとで請負労働者にもCCで送られてきた。これは労働者派遣にあたるのか。厚生労働省の37号告示に関する疑義応答集は、第2集の問10でこの問いに答えています。CCで送ること自体では「直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません」。ここまでは白です。
分かれ目はその先にあります。同じ回答は、次のような場合には「労働者派遣事業と判断されることになります」としています。メールの内容が「実質的に作業の順序や従業員への割振り等の詳細な指示」を含む場合。「作業方針の変更が日常的に指示」される場合。そして「発注者から請負労働者に直接返信を求めている」場合です。いずれも、請負事業主が自ら業務の遂行方法を指示しているとは認められない状態にあたります。線はここです。
客先のチャットに招かれることも、朝会に呼ばれることも、それ自体はなんの問題もありません。問題になるのは、そこで日々の作業を割り振られ、あなたが直接返し続ける状態です。初月はこれが最もできやすい時期です。自社側の受け皿がまだ決まっておらず、聞くのも返すのも目の前の人が一番早いからです。無理もありません。
2. 境目に立つのは「割り振り」という言葉
同じ疑義応答集の第1集は、問7で偽装請負と判断される例を挙げています。発注者が「請負業務の作業工程に関して、仕事の順序・方法等の指示を行ったり、請負労働者の配置、請負労働者一人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすること」。口頭のやりとりに限りません。「発注者が作業の内容、順序、方法等に関して文書等で詳細に示し、そのとおりに請負事業主が作業を行っている場合」も同じ扱いです。
この線引きは、現場の感覚では冷たく聞こえます。隣の席から「次これお願い」と言われて断るのか、と。断る話ではありません。誰が決めたことなのかを、自社が答えられる状態にしておく話です。
3. 更新の時計は、あなたが慣れるより先に動きます
業界メディアで示されている相場では、SESの準委任契約は3ヶ月から6ヶ月の単位で結ばれることが多く、更新の可否は契約満了の1ヶ月前までに通知されるのが慣行とされています。法律で決まった期限ではありません。3ヶ月契約だとすると、2ヶ月目の前半には話が動き出します。時計は勝手に進みます。
そうなると、判断の材料はほぼ初月から集まります。2ヶ月目の途中で急に良くなった人と、初月から段取りが立っていた人とでは、手元に残っている材料の量が違います。ここは筆者の見立てですが、「何を聞けばいいか分かっている人だ」と初月に思われることの効き目は、初月に出した成果物の効き目より長く残ります。
4. 経路は、作るより直すほうが高くつきます
筆者の経験則として、2ヶ月目以降に「今後は弊社の担当を通してください」と切り出すのは、初月に同じことを言うより難しくなります。すでに直接やりとりする関係ができあがっていて、途中からの変更は相手の手間を増やす提案に見えるからです。初月なら、同じ内容が「うちの会社のやり方です」で通ります。中身は同じです。言う時期の違いだけで、通り方がここまで変わります。
行動提案
初週に、1枚に書き取っておく
初週のうちに確かめておくと、あとの判断が速くなります。次の4つです。答えが「分からない」のままでも構いません。分からないと分かっている状態が要ります。
- 作業依頼が誰から出るか。現場の誰が決めて、自社の誰が受けるか
- 自分の判断で進めてよい範囲はどこまでで、どこから確認が要るか
- 持ち出しの線引き。資料とソースコードの扱い、画面の撮影の可否、生成AIに何を貼ってよいか
- 困ったときに最初に連絡する自社の窓口と、その人が見ている時間帯
4つのうち、後々まで効くのは1つ目です。残りは聞けば片づきます。
直接の依頼が来たときの返し方
「承知しました。弊社側にも共有しておきます」。この一言で足ります。断ってはいません。経路を1本足しているだけです。共有先は自社の現場リーダーでも営業でも構いませんが、誰に流すかは初週に決めておきます。決めていないと、この一言が出てきません。
やってはいけないこと
最も重いのは、直接のやりとりが常態になることです。これは悪意なく起きます。急ぎの依頼に直接返し、そのほうが早いと双方が学習し、次からも直接来る。筆者の実感では、3週間ほどで定着します。気づいたときには、あなたが何を頼まれているかを自社の誰も知らない状態ができあがっていて、更新の話が来ても、自社は手元に材料を何ひとつ持っていないということになります。
残り2つは軽く触れます。1つは、前の現場の手順をそのまま持ち込んで改善を提案することです。初月の提案は、その現場が過去に検討して見送った理由をたいてい踏んでいません。もう1つは、分からないことを持ち帰って黙ることです。1日黙ると、翌日はさらに聞きにくくなります。
記録は1日3行
日付、誰からの依頼か、自分がどこまで決めたか。この3行を毎日残すだけで、更新面談でも半年後の経歴書でも、同じ記録がそのまま使えます。「経歴書に書くことがない」という相談の多くは、この3行が残っていないところから来ています。初月に始めれば、30行たまった状態で2ヶ月目に入れます。それで足ります。
指示がどこを通って自分に届くかを決め、決めたことを毎日3行残す。初月にできるのは、およそそれだけです。それだけで、更新の話を事実の上で進められるようになります。
「その依頼は、誰が決めたものですか」。初月にこれを聞ける相手がいる会社かどうかは、入る前に確かめられます。
アンサーライズは受注単価を100%開示し、参画する案件はエンジニア本人が選びます。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません。会社が別途負担しています。定期的な1on1もあります。初月に書き取った経路も、毎日の3行も、受け取る相手がいる状態から始められます。まずは数字を見にきてください。
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