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契約・法律

面談で見えるのは、案件の中身だけではありません。見えているのは、その現場で誰が人を決めているかです

明るい会議室で、木目のテーブルを挟んで3人が向かい合っている写真。奥側に2人が並んで座り、左の男性は両手をテーブルの上で組み、中央の女性は両手の指先を合わせて手前の話し手を見ている。手前の右側にはワイシャツ姿の男性が背中を見せて座り、書類を1枚手に持っている。テーブルの上には紙が数枚とタブレット端末が置かれ、背景は水色のガラスパーティションで明るい

結論

面談の席では、案件の中身を聞く前に見ておくものがあります。その部屋で、誰が何を決めているかです。作業の内容も使う技術も、あとから資料で追えます。追えないのは、当日その場で交わされたやりとりの形のほうです。

手がかりは法令の運用指針にあります。厚生労働省は37号告示の疑義応答集で、発注者が特定の人を指名して業務に就かせたり、特定の人の就業を拒否したりする状態を、適正な請負等とは認められない側に置いています。面談は、その状態が表に出やすい場面です。

この考え方は、もともとアジャイル型開発を念頭に書かれたものでした。2026年5月25日、同じ疑義応答集にQ8が追加され、アジャイル以外のシステム開発にも当てはまることが明示されています。いま目の前にある普通のSES案件の面談にも、この物差しがそのまま当たります。

根拠

疑義応答集の第3集を、面談の場面に引き直して読みます。線がどこに引かれているかは、原文が具体的に書いています。

1. 線は「指名」と「就業拒否」に引かれています

厚生労働省の37号告示に関する疑義応答集(第3集)は、Q7の回答でこう書いています。「発注者が特定の者を指名して業務に従事させたり、特定の者について就業を拒否したりする場合は、発注者が受注者の労働者の配置等の決定及び変更に関与していると判断されることになり、適正な請負等とは認められません」。

ここが線です。手前にあるのは、技術や経験を確かめる行為です。向こう側にあるのは、誰をその仕事に就かせるかという決定です。面談の席で「この人でお願いします」「この人は外してください」が発注者側から出ているなら、配置を決めているのは受注者ではありません。契約書の題名が準委任であっても、その一文で実態のほうが動きます。

では、どこを見るのか。確かめる行為が、選別の決定に変わる瞬間です。同じQ7の後半が、その境目を書類の側から示しています。

2. スキルシートは、そこで何ができるかで扱いが変わります

発注者が、技術・技能レベルと経験年数を書いた「スキルシート」の提出を求めたとします。これだけでは、直ちに偽装請負と判断されるわけではありません。回答が置いた条件は、「それが個人を特定できるものではなく、発注者がそれによって個々の労働者を指名したり特定の者の就業を拒否したりできるものでなければ」という部分です。

判定しているのは紙の有無ではありません。その紙で個人を選べるかどうかです。氏名のイニシャル、生年月日、顔写真、現住所。個人が特定できる欄が増えるほど、その書類は選別の道具に近づきます。面談の前に「どこまで出すことになっていますか」と自社に聞いておくと、当日の見え方が変わります。

3. 2026年5月、この物差しはシステム開発全般に届きました

第3集のQ1からQ7は、アジャイル型開発を題材に書かれています。ここだけを読むと、自分の案件には関係のない話に見えます。ウォーターフォールの改修案件に入っている人が、アジャイル向けに書かれた文書を自分の根拠として持ち出せるのか。もっともな疑問です。

2026年5月25日に追加されたQ8が、そこを閉じました。設問は「Q1〜7の考え方は、アジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合についても当てはまりますか」。回答は一文です。「アジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合についても当てはまります」。指名と就業拒否の線は、これでシステム開発の請負全般に届きました。あなたの面談にも当たります。

4. 派遣では、同じ面談が「特定することを目的とする行為」と呼ばれます

ここまでは請負・準委任の話で、根拠は37号告示の疑義応答集です。労働者派遣には別の条文が当たります。根拠が違うので、結論の出方も違います。

派遣のほうを定めているのは、労働者派遣法の第26条第6項です。紹介予定派遣を除いて、派遣の役務の提供を受けようとする者は、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。努力義務です。いっぽう派遣先が講ずべき措置に関する指針は、同じ行為を「行わないこと」と書いています。例に挙がっているのは3つです。労働者派遣に先立って面接すること、履歴書を送付させること、若年者に限ることとすること。罰則はありません。行政指導の根拠にはなります。

同じ指針には、続けてこうも書かれています。派遣労働者になろうとする者が自らの判断の下に事業所訪問や履歴書の送付を行うことは、特定を目的とする行為が行われたことには該当しない。ここは現場見学の話に直結します。自分から希望して見に行くのと、先方から呼ばれて並べられるのとでは、同じ訪問でも意味が変わります。

ですから、面談があるという事実だけでは、その案件が準委任だと言い切れません。言えるのは逆のほうです。面談の中身が選別そのものになっているなら、準委任という前提のほうが揺れています。

5. 「対等」と「自律」が、当日の観察点になります

第3集は、適正かどうかの判断を繰り返し同じ2語に預けています。Q2は、「実態として、発注者側と受注者側の開発関係者が対等な関係の下で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断して開発業務を行っていると認められる場合」を、適正な請負等にあたるとしています。抽象的な言葉に見えます。ところが面談の席では、かなり具体的に現れます。

筆者の見立てでは、よく出るのは「自分の判断で進めてよい範囲はどこまでですか」と聞いたときの間合いです。すぐ答えが返る現場は、その線を日ごろ意識しています。答えが「その都度こちらで指示します」に寄る現場は、指示の出どころが客先側に固まっている可能性があります。答えの中身と同じくらい、誰が答えたかを見てください。

行動提案

面談で聞く4つ

答えの中身と同じくらい、誰が答えるかを見ます。

  • 日々の作業依頼は、どなたから出ますか。決めるのは誰で、受けるのは誰ですか
  • 自分の判断で進めてよい範囲は、どこまでですか
  • 体制は何社で構成されていますか。私の契約の相手はどこになりますか
  • 稼働時間の下限と上限、超過と控除の単価はどうなっていますか

4つのうち、当日いちばん効くのは1つ目です。残りは持ち帰っても確認できます。

現場見学で見るもの

見学の時間は短く、見えるものは限られます。それでも3点は確かめられます。自社の担当者が同席しているか。同席していて、発言しているか。そして、あなたが座ることになる島に何社の人がいて、それぞれが誰に報告しているように見えるか。

最後のひとつは、その場で答えが出なくても構いません。見学のあとに自社へ「あの島は何社ですか」と聞けば済みます。聞いたときの返り方も情報です。

その場で起きたら、事実だけ持ち帰る

面談の席で次のことが起きたら、評価はせずに事実だけ持ち帰ってください。

  • 発注者側が、複数の候補を並べて比べる話をした
  • 「この人でお願いします」という言い方が出た
  • 自社の担当が同席していない。または同席していて一度も発言しなかった
  • 履歴書や顔写真の提出を求められた

持ち帰る先は自社の担当です。伝えるのは、誰が何と言ったかだけで足ります。判断まで背負う必要はありません。自社が現場と話す材料は、そこまでで揃います。

あなたがその場でやってはいけないこと

最も重いのは、条件をその場で確定させることです。単価も稼働時間も、面談の席で発注者と直接合意しないでください。決めるのは会社間です。もうひとつ、答えにくい質問を飲み込まないこと。聞けない相手だと分かるのも、その日に得られる情報のうちです。

面談は、あなたが選ばれる場だと言われます。半分は当たっています。残りの半分で、あなたは見ています。見えるのは案件の中身であり、同時に、その現場で誰がどこまでを決めているかという運用そのものです。厚生労働省が線を引いたのは後者でした。次の面談では、持ち帰る項目を1つ増やしてください。この面談の結果を、誰がどう使うのか。筆者の経験では、この一問に自社が即答できる案件は、参画したあとの相談先も最初からはっきりしています。

「日々の作業依頼は、どなたから出ますか」。この質問に答えが返ってくる会社かどうかは、入る前に確かめられます。

アンサーライズは受注単価を100%開示し、参画する案件はエンジニア本人が選びます。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません。会社が別途負担しています。希望しない案件への一方的なアサインは行いません。面談で持ち帰った事実を、受け取る相手がいる状態から始められます。まずは数字を見にきてください。

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