炎上案件かどうかは、面談の空気では分かりません。分かるのは、いまどの工程にいて、あと何日残っているかです
結論
炎上している案件でも、面談の席は穏やかに進みます。担当者は落ち着いています。説明も整っています。ただ一つ、どれだけ穏やかに進めても取り繕えないものが席の上に残っていて、それが日程表です。
いまどの工程にいて、リリースまで何日あるか。工程と残り日数を並べ、出てきた日数をこれから通る工程に配ってみると、配りきれるかどうかがその場で分かります。配りきれないなら、どこかが縮んでいます。縮むのは、たいてい後ろです。テストです。
ですから面談で聞くのは日付です。4点あります。いまの工程。結合テストの開始予定日。リリース予定日。そして、今回の増員が当初の体制計画に入っていたかどうか。相手が答えても答えなくても、4点とも手がかりになります。
日程のほかに、もう一つ見るものがあります。その日程を誰が握っているかです。質問に答えられる人がその席に同席しているかどうかで、参画したあとにあなたの確認がどこまで往復することになるのかまで、だいたい見当がつきます。
なお、同じ面談の席で誰が人を決めているかを見る話は、前回の記事で扱いました。あちらが見ているのは指揮命令の線で、ここで見ているのは日程の線です。同じ席から、別のものを見ています。
根拠
1. 増員の理由が「欠員の補充」なら、遅れはもう起きています
要員を足すという判断は、遅れへの対処として最も自然に見えます。そして、あまり効きません。フレデリック・ブルックスは1975年の『人月の神話』で、遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加はプロジェクトをさらに遅らせるだけだと書きました。のちにブルックスの法則と呼ばれる一文です。
理由は3つ挙げられています。新しく入った人が戦力になるまで教育の時間がかかること。人数が増えるほど連絡の経路が組み合わせの数で増えること。そして、分割できない作業がどうしても残ること。
ということは、遅れている現場が人を増やすとき、その現場は効きにくいと分かっている手を打っていることになります。それでも打つのは、ほかに手が残っていないからです。「急募」という言葉は、案件の勢いではなく選択肢の少なさを映している場合があります。
だから聞きます。「今回の増員は、当初の体制計画に入っていたものですか。それとも追加ですか」。計画どおりなら、工程が進んだことによる自然な増員です。追加だという答えが返ってきたなら、何がどの工程で足りなくなったのかを、その場でそのまま続けて聞けます。
2. 「まだ時間はあります」を、数字で確かめる
この説明は、そのままでは確かめようがありません。比べる相手が要ります。それは公開されています。
数値を出しているのはIPA(情報処理推進機構)です。「ソフトウェア開発分析データ集2022 業種編(情報通信業)」の表A3-3-5が、開発5工程の実績月数を比率にしたものにあたります。新規開発22件の中央値は、結合テストが0.168でした。総合テストも0.157で、ほぼ同じ厚みがあります。
ここで注意が要ります。IPAは同じ節に「P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1とはならないことに注意されたい」と明記しています。工程別の中央値は、同じプロジェクトから出た値とは限らないからです。ですから「2つ足して工期の3割」という読み方はしません。使えるのは1工程ぶんの目安です。件数も22件しかありません。業界の基準として持ち出せる数ではありません。
それでも、桁は測れます。開発期間が10か月なら、0.168はおよそ1.7か月にあたります。ここで面談の相手が「結合テストの開始は来月、リリースはその3週間後」と言ったとします。3週間では、結合テスト1工程ぶんの目安にも届きません。差は比率として出ます。
聞き方は日付です。「結合テストの開始予定日と、リリース予定日を教えてください」。工程の名前だけでは、長さが分かりません。
3. 未確定の仕様を、現場が把握しているか
製造工程に入った案件に未確定の仕様が残っていること自体は、珍しくありません。危ないのは、どこが未確定なのかを現場が把握できていない場合です。決まっていない部分は、たいてい後工程の日程に形を変えて出てきます。
「いま仕様が確定していない機能はどれですか。決めるのはどなたですか」。この2問は続けて聞きます。前半に答えが返ってきたのに後半で詰まるようなら、仕様を決める人は現場から遠いところにいて、あなたが参画してからの確認もそこまで運ばれることになります。
4. 半年で3人が入れ替わった席は、個人の問題ではありません
「この席は新設ですか、引き継ぎですか」と聞き、引き継ぎなら前の方の参画期間まで確認します。短い在籍が続いている席なら、原因は個人の適性より体制の側にあると考えるほうが自然です。抜けた理由まで教えてもらえることは、あまりありません。それでも構いません。期間だけで足ります。
5. 持ち帰りが続く面談は、それ自体が答えです
日程の質問にその場で答えられる人がいなければ、日程を握っているのは同席していない誰かです。参画したあとに出てくる確認事項も、同じ経路をたどって、その席にいなかった誰かのところまで往復することになります。
もう一つあります。守秘義務で日程を出せない案件は実際にあります。ただし「お話しできません」と「把握していません」は別物です。筆者は、この言い方の差が面談でいちばん拾いやすい手がかりだと考えています。前者は管理されている情報で、後者は管理されていない情報だからです。
行動提案
面談の前に、自社の営業が答えられるかを見る
- この案件は何次請けで、自社の契約先はどこか
- 今回の募集は計画上の増員か、欠員の補充か
- 提出するスキルシートに、どこまでの個人情報が載るか
ここで詰まるようなら、当日の面談でも同じ情報は出てきません。3つめは前回の記事で扱った、指名と就業拒否の線に関わります。面談の前に自社側で決着しておく話です。
当日は、工程名ではなく日付で聞く
- いまはどの工程で、当初の予定と比べてどのあたりですか
- 結合テストの開始予定日と、リリース予定日はいつですか
- 今回の増員は、当初の体制計画に入っていたものですか
- いま仕様が確定していない機能はどれで、決めるのはどなたですか
4つとも、その場で評価する必要はありません。持ち帰って自社の担当に渡す事実です。炎上しているかどうかの判断まで、あなたが一人で背負う仕事ではありません。
答えを受け取る相手が、自社にいるか
ここまでの質問は、聞けば何かしら返ってきます。分かれ目はその先です。返ってきた答えを自社の担当に伝えたあとに何が起きるかは、まったく同じ面談をしていても、会社によってはっきり違います。「もう決まっているので」で終わる会社。日程の数字を一緒に見て、断る余地まで一緒に考える会社。案件を断る余地が制度として残っているかどうかは、面談の前、会社を選ぶ段階で決まっています。
「結合テストの開始予定日はいつですか」。持ち帰った答えを、一緒に見てくれる会社かどうかです。
アンサーライズは受注単価を100%開示し、参画する案件はエンジニア本人が選びます。案件単価の60%以上(平均65%)を額面給与として支給します。この割合に社会保険料の会社負担分は含みません。会社が別途負担しています。面談で聞いた日程や体制の話は、そのまま数字と並べて検討できます。まずは開示している単価を見にきてください。
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